
もしかして更年期?更年期の診断とは
生理の規則が乱れてきたり、ホットフラッシュやほてりがひどくて、「もしかして、わたし更年期かしら?」と思うことがありますよね。
「わたし、更年期かも」と思っても、なかなか婦人科に受診するのは緊張してしまいますね。
ホットフラッシュや、今まで穏やかな性格だった人が、急にカーッとなったり、生理不順など、更年期特有の症状が強ければ、婦人科を受診するきっかけになりますが、更年期の症状の中には、頭痛や肩こりといった、いっけん更年期とは関係なさそうな症状もあるので、なかなかすぐに、病院で更年期が見つかって治療が始まることは稀です。
多くの人は、動悸やめまい、関節痛、倦怠感、頭痛などのからだの症状をうったえて、内科や整形外科を受診します。そこで、腫瘍や臓器・組織の変形などといった器質的疾患がみつからない場合に、婦人科を紹介されて、更年期の診断を受けることが多いです。
*器質的疾患:症状や疾患が臓器・組織の形態的異常にもとづいて生じている状態更年期の不定愁訴と間違えやすい病気
更年期には、肩こりや関節痛といった痛みや、頭痛、動悸など心血管系の症状、抑うつやイライラなど精神的なものまで、さまざまな症状が起こります。更年期の診断では、このような症状のなかに重大な疾患が隠れていないか、慎重に診断を進める必要があります。
更年期の不定愁訴に関連する可能性の高いものには、
- 甲状腺機能亢進症・低下症
- 緊張性頭痛
- 高血圧
- 内耳性めまい
- 関節リウマチ
- 悪性腫瘍・脳腫瘍
などがあります。
更年期の診断方法とは
更年期症状に似た症状がでる、上記の疾患ではないことがわかったうえで、更年期に特有のホルモンやマーカーを検査して、診断が行われます。
更年期の診断時にチェックする検査は、
- 卵巣機能検査(ホルモン検査)
- 血清脂質検査
- 骨代謝マーカー
- 子宮がん検診
- 乳がん検診
です。
卵巣機能検査(ホルモン検査)
FSH
閉経前になると、FSHの分泌は上昇します。
FSHは、脳の下垂体前葉から、Gn-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の刺激を受けて分泌されるホルモンです。通常は、視床下部からGn-LHが分泌されると、下垂体前葉からFSHが分泌されます。FSHが性線を刺激すると、卵巣からエストロゲンが分泌されます。
しかし、閉経前後の更年期には、卵巣ではエストロゲンをつくりだすことができなくなってしまっています。脳から指令がでても、エストロゲンが分泌されないので、さらにFSHが分泌されるようになります。
LH
閉経前になると、LHの分泌は上昇します。
LHは、FSHと同様に、脳の下垂体前葉から、Gn-RH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の刺激を受けて分泌されるホルモンです。通常は、視床下部からGn-LHが分泌されると、下垂体前葉からLHが分泌され、LHが性線を刺激すると、卵巣からプロゲステロン(P4)が分泌されます。
しかし、閉経前後の更年期には、卵巣ではエストロゲンをつくりだすことができなくなってしまっています。脳から指令がでても、エストロゲンが分泌されないので、さらにLHが分泌されるようになります。
E2(エストロゲン)
更年期になると、E2値は低下します。
E2とは、エストラジオールのことです。エストロゲン(卵胞ホルモン)には、エストラジオール(E2)、エストロン(E1)、エストリオール(E3)があります。いちばんエストロゲンとしての作用が強いエストラジオール(E2)の値を検査値でみます。
P4
P4はプロゲステロン(黄体ホルモン)のことで、エストロゲン同様に、更年期には分泌が低下します。
プロゲステロンにもいくつか種類があり、ほかにはP2、P3がありますが、プロゲステロンとしての作用はほとんどないため、検査ではP4のみを確認します。
血清脂質検査
エストロゲンには、血中のコレステロールを低下させるはたらきがあります。
更年期になると、エストロゲンの分泌が減るため、コレステロール値が高くなったり、中性脂肪が高くなったりと、高脂血症のリスクが増えます。
基準値 | 異常値 | |
---|---|---|
T-Cho(総コレステロール) | 130~219 mg/dL | 220以上 |
HDL-コレステロール | 40~99 mg/dL | 40未満 |
LDL-コレステロール | 60~119 mg/dL | 120以上 |
TG(中性脂肪) | 30~149 mg/dL | 150以上 |
骨代謝マーカー
硬くて丈夫な骨ですが、実は骨も皮膚のように日々新しい細胞に生まれ変わっています。
骨は、食事などから吸収したカルシウムから骨をつくる骨形成と、骨を分解し、血中のカルシウム濃度を上昇させる骨破壊を繰り返しています。この、骨の代謝を骨リモデリングといいます。
エストロゲンは、骨のリモデリングにも関わっていて、骨を分解するはたらきを抑制しています。そのため、エストロゲンの分泌が減った更年期以降では、骨粗鬆症のリスクが高くなります。
骨密度測定
子宮がんマーカー・乳がんマーカー
子宮がんや乳がんは、遺伝やエストロゲン感受性が高い場合に罹ることがあります。
更年期の治療法のひとつ、HRTでは、女性ホルモンを補充するため、子宮がんや乳がんのリスクがある人には避けなければなりません。
今後の更年期の治療方針を決めるためにも、子宮がんや乳がんなどホルモン感受性のがんがあるか調べます。
また、「閉経とは12ヶ月以上の無月経」をもって定義されていますが、子宮摘出をしたことのある人では、月経の有無が判断できません。
月経により、閉経したかどうかを判断できない場合では、
- FSH40IU/mL以上 かつ、
- エストラジオール20pg/mL
により、閉経後と判断します。
性格や生活習慣も更年期の治療では大切です
更年期にあらわれる症状には、身体的な症状の他にも、不眠症や倦怠感、抑うつ気分などの症状もあります。
心理・精神的な面の問診
- 睡眠の状態
- 家族(こども、親)などの状況
- 職場での状況
- 人間関係
- 性格傾向
- 運動習慣
- 飲酒、喫煙
更年期の治療を行なっていくために、生活習慣や、家庭や職場でのストレス、更年期以前の性格、飲酒・喫煙などの環境もお話しましょう。